親不知の抜歯④ 左上 抜歯当日 その2

(2014.2.6 過去ブログからの転載です)

 

鼻と口の部分のみが中央の穴から出て外から干渉できるようになるドーナツ型の黄色いタオルを被せられた無抵抗状態の私と、真面目で優しいがやや声が小さめで弱々しい歯医者さんによる、抜く抜かないの静かな押し問答タイムと同じくらいの時間をようして抜歯は終わった。
口腔外科の歯医者さんが、10月に右の親不知を上下一気に抜き去ったときは、上の親不知についてはほぼ手術の動きを感知できないままに抜歯が終わったが、今回はそうはいかなかった。
まず麻酔のための麻酔が効いてきたころ、歯を抜くための針の麻酔を二回刺された。おそらく右の親不知よりも奥まっていたのかと思う。
で、特に二回目がやっぱり嫌だった。
もちろん我慢できないほどの痛みではないけれど、じっとり刺される感覚がなんだか嫌な感じなのだ。
そしてその後、抜歯が始まる。
抜歯というけど、感覚的には抜歯には思えない。
一番端の奥歯の側面に器具をセットして、歯が並ぶ方向に思いっきり押されているだけとしか思えない。
親不知の抜歯だとわかっていなければ、「歯のドミノしようぜ! うおおおお!」 って言って力任せに押し倒そうとしていると勘違いするに違いない。
そしてたまーに、ガリッ!っとやばい音がする。
危うく「先生、何か間違ってません? いまガリッていいましたけど。」と指摘しそうになる。
身体を伸ばしたときに服が小さくてビリっていって破けた時みたいな感じだ。
いやいやいやいや! 今あれでしょ! ドミノでしょ! 間違ってやりすぎてるっしょ!!
と本気で思ったが、おそらくそっちの方が実際に抜歯だったのだろう。
「あ…もう抜けてますんで…」と先生が小さく言う。が、その後もしばらく作業は続いて微妙なリアクションをしてしまう。
歯科衛生士さんも明るく「はーい、もうちゃんと抜けましたからねー」って励ましてくれる。
この人ほんといい人だ。

私の口腔内から本日付けで異動になった左上の親不知さんは、噛むところが一面真っ黒だった。
虫歯とはわかっていたが、これを見るとまあ酷いものだ。
こんな悪いものが身体からいなくなったわけだから、これはかなりの断捨離に違いない。

会社に戻ってから、仕事を続行したが、やはりいまいちグロッキーな気分が邪魔をして、集中力が落ちてしまった。
さっき聞いた話も忘れてしまうので、こりゃいかん。
こりゃ仕事を別の人に移管しないと、イカン!と会社の中心で叫びたくなるほどの気のそぞろさだったので、やっぱり忙しいときの親不知抜歯はお勧めしない。